こんなに小さな肺腫瘍も切除できる!
ー リピオドールマーキングを利用した肺切除 ー
京都府立医科大学呼吸器外科で取り組んでいる手術の紹介です。
リピオドールマーキングの説明ビデオ(リピマPV)はこちら↓
(*一部、実際の手術映像が流れます
)
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■ 小さな肺病変が見つかることが増えています
近年CTの性能向上に伴い、1cm以下の小さな肺腫瘍やすりガラス状陰影:GGO (ground glass opacity) と呼ばれるような、淡い影を呈する病変が多く見つかるようになりました。これらの病変の中には早期の肺癌や他の臓器の癌(例えば大腸癌など)の肺転移病変が含まれている場合があるため、外科的切除を検討するケースが少なくありません。
■ 京都府立医大のリピマ!
ー病変がどこにあるかわかるようにする工夫ー
しかし、こういった小さな病変は手術の際に胸腔鏡(内視鏡)で観察したり指で触ってみてもどこにあるのかわかりにくいため、その位置がわかるようにするための工夫「肺マーキング」が必要です。
京都府立医科大学では、このような位置を同定することが難しい(どこにあるのかがわかりにくい)病変を確実に切除するために「リピオドールマーキング(リピマ)」を利用しています。
■ リピオドールとは?
リピオドールは油性の造影剤です。古くからある造影剤で他の臨床現場で利用されています。リピオドールマーキングの際には、肺病変の近くに注射してマーキングするとそこにとどまり、レントゲンで撮影するとその部分が「見える」ようになります。手術中にX線透視を用いると、マーキングした部位が3次元的にはっきり見えるようになるため、小さな病変もリピドールマーキングすることで確実に切除できるようになりました。
肺のマーキングに関して様々な方法が提案されていますが、それぞれに正確性や危険性についての問題点があり、これが一番良いという方法は定まっていません。マーキングの際に空気塞栓という合併症の報告例もありますが、当院ではこれまで200以上の症例で空気塞栓の発症なく施行してきており、安全性も高い手技と考えています。
今後も十分に注意しながら、リピオドールマーキングを利用して小さな肺腫瘍を確実に切除していきたいと考えています。
<リピオドールマーキングの方法>
リピオドールマーキングは当院(京都府立医科大学)の放射線科専門チームに依頼して行っています。マーキングは手術当日か数日前に行います。
0.CT室に移動して横になります。
1.針を指す体表(体の表面)の部分に痛み止めの注射を行います。
2.CTを撮影して病変の位置を確認しながら、体表から肺病変の近くに向かって細い針をすすめます。
3.肺病変のすぐ近くに極少量(0.3-0.4cc)のリピオドールを注入します。
4.その場でCTを撮影しリピオドールが確実に注入されているのを確認します。
5.レントゲンでマーキングが見えるようになっていることを確認します。
<リピオドールマーキングの調査のお願い>
京都府立医科大学附属病院でリピオドールマーキング併用胸腔鏡下肺部分切除術を
受けられた患者様・ご家族の皆様へ
リピオドールマーキングの有用性に関する調査へのご協力のお願い
今回、京都府立医科大学は、胸腔鏡下肺部分切除術前に施行したリピオドールマーキングに関する研究を実施いたします。そのため、京都府立医科大学附属病院でリピオドールマーキングを受けられた患者様の診療録を過去にさかのぼって調査させていただきたいと考えています。
研究の目的
この研究は、これまで肺の小病変に対して胸腔鏡下肺部分切除術前に施行したリピオドールマーキングについて、画像所見や手術成績など多角度から検討して、有用性について明らかにする事を目的としています。
この研究結果から、リピオドールマーキングを併用する事によって小さい肺病変であっても確実に切除する事ができ、より多くの患者様に有益になると考えています。
研究の方法
・対象となる患者様について
平成18年5月1日から平成25年3月31日までの間に、京都府立医科大学呼吸器外科、放射線科で胸腔鏡下肺部分切除術前にリピオドールマーキングを受けられた患者様が対象となります。
・方法について
対象となる患者様の疾患名や病歴、CT検査の画像データの一部や手術記録を調査します。すでに検査が終わっているデータを用いた研究ですので、この研究への参加によって、追加される検査や治療は全くありません。
・資料の管理について
情報はすべて匿名化され、個人が特定されることはありません。また、研究発表が公表される場合でも個人が特定されることはありません。
ご自分、あるいはご家族の情報を本研究に登録したくない場合は、平成26年3月31日までに下記連絡先までご連絡ください。なお上記までに申し出がなかった場合には、参加を了承していただいたものとさせていただきます。
本研究は、京都府立医科大学医学倫理審査委員会において、適切な研究であると承認されています。この研究計画についてご質問がある場合は下記までご連絡ください。
連絡先
京都府立医科大学 呼吸器外科
職・氏名 助教・常塚 啓彰 電話:075-251-5023 |
<他の術前マーキング法>
「 肺癌診療ガイドライン2012 確定診断 」より一部抜粋
経皮的マーキング:
色素、造影剤、コラーゲン、リピオドール、アイソトープ、ワイヤー、コイルなどを用いる。気胸、出血、 マーカーの消失や脱落などの合併症に留意する必要がある。また非常に稀であるが空気塞栓の報告例がある。
経気管支的マーキング:
*リピオドールマーキングに関連する業績
Shimada J, K. Terauchi, M. Shimomura, D. Katoh.
Preoperative Lipiodol marking for small-sized lung cancers.
5th Asia Pacific Lung Cancer Conference 2012
島田順一、寺内邦彦、下村雅律、加藤大志朗、常塚啓彰、岡田悟、石原駿太.
術中触知困難な小型肺癌に対する治療戦略 術前リピオドールマーキング.
第65回日本胸部外科学会 2012年
常塚啓彰,島田順一,加藤大志朗,寺内邦彦,下村雅律,一瀬かおり,石原駿太.
マーキングを併用し精巣腫瘍両側多発肺転移の切除を行った1例.
第28回日本呼吸器外科学会総会 2011年
岡田悟,西村元宏,加藤大志朗,寺内邦彦,島田順一.
位置同定が困難な肺病変に対するリピオドールマーキングを用いた胸腔鏡下肺切除術.
第52回日本肺癌学会総会 2011年
岡田悟,西村元宏.
リピオドールマーキングを用いて切除したGGOの1例.
第29回神崎川肺疾患研究会 2011年
寺内邦彦,島田順一,加藤大志朗,下村雅律,常塚啓彰,岡田悟,一瀬かおり.
スリガラス状陰影(GGO)病変に対するリピオドールマーキングを併用した肺切除術.
第27回日本呼吸器外科学会総会 2010年
寺内邦彦,島田順一,加藤大志朗,下村雅律,常塚啓彰,一瀬かおり,三木恒治.
微小な転移性肺病変に対する治療戦略-術前リピオドールマーキングを用いた肺切除術.
第48回日本癌治療学会学術集会 2010年
常塚啓彰, 島田順一, 加藤大志朗, 寺内邦彦, 下村雅律, 岡田悟, 神崎智仁.
深部の肺微小病変に対するリピオドールを用いたダブルマーキング法による肺部分切除術.
第26回日本呼吸器外科学会総会 2009年
寺内邦彦, 島田順一, 加藤大志朗, 下村雅律, 常塚啓彰, 岡田悟.
Pure GGO病変に対するリピオドールマーキングを用いた肺切除術.
第50回日本肺癌学会総会 2009年
寺内邦彦, 島田順一, 加藤大志朗, 下村雅律, 常塚啓彰, 岡田悟, 一瀬かおり.
みえないものを見えるようにする -リピオドールマーキングを用いた肺切除術-.
第71回日本臨床外科学会総会 2009年
下村雅律, 島田順一, 伊藤和弘, 柳田正志, 寺内邦彦, 常塚啓彰.
小型肺腫瘤に対する術直前CTガイド下リピオドールマーキングの有用性.
第25回日本呼吸器外科学会総会 2008年
伊藤和弘, 島田順一, 柳田正志, 寺内邦彦, 下村雅律, 常塚啓彰, 加藤大志朗, 岡田悟.
肺癌完全切除術後のGGOに対してリピオドールマーキング後に部分切除を行った異時性原発性肺癌の一例.
第25回日本呼吸器外科学会総会 2008年
寺内邦彦, 島田順一, 加藤大志朗, 下村雅律, 常塚啓彰.
小型肺腫瘤に対するCTガイド下リピオドールマーキングの有用性.
第21回日本内視鏡外科学会 2008年
寺内邦彦, 島田順一, 加藤大志朗, 下村雅律, 常塚啓彰.
術中触知困難な肺病変に対するリピオドールマーキングを用いた肺切除術.
第49回日本肺癌学会総会 2008年
伊藤和弘, 白方秀二, 鴻巣寛, 沢辺保範, 岩本在弘, 多田浩之, 加藤大志朗, 島田順一.
胸腔鏡手術に際しリピオドールマーキングが有用であった肺内転移を伴う肺癌の一例.
第49回日本肺癌学会総会 2008年
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